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2010. 2. 5.Up Dated. | ||||||||||
レジデンス再評価の動き | ||||||||||
収益用不動産としてレジデンスが再評価され、取引キャップレートが下がり始めているようです。 この背景には、オフィスビルに比べてレジデンスの賃料が安定していることが再認識されたようですが、元々賃料の安定性はレジデンスの特徴でしたので、景気低迷下で改めてその特性が浮かび上がったとも言えます。 因みに、レジデンスの賃料特性をデータで見ると、次のようになります。
上の表は、REITが保有する物件のトラックレコード(サンプル数87件)から算出した数値ですが、この表を見ると、レジデンス賃料の変動率はオフィスビルの約半分になっています。 但し、このデータはマクロでの傾向ですから、そのまま実際の投資判断には使えません。 一口にレジデンスと言っても、タイプや立地によっても賃料動向は変わりますし、賃料単価と賃料総額によってもパフォーマンスが異なります。 又、オフィスビルも都内業務地区のAクラスビルとB・Cクラスビルでは変動率も違いますから、闇雲にレジテンスに飛び付くのは早計です。 更に、個々の物件の立地条件や建物の質によっても賃料動向や稼働率が異なりますから、投資行為では、これらの要素を加味した上で判断する必要があります。 然しながら、REITを含めた不動産投資に必要な判断補完情報というのは少なく、一般には流布しません。 又、特定の人の見方に依存した情報というのも、偏ってしまう可能性があります。 本来は、データによって傾向や特徴を分析した情報が必要ですが、不動産には元になる信頼のおけるデータというのが少なく、且つ、分析手法も確立していませんから、投資家は自らで情報の質を吟味しなくてはなりません。 この点が、不動産投資の難しさに繋がっていますし、又、難解故に生じる情報ギャップと認識の差が投資チャンスに繋がるという矛盾があります。 このような傾向は、日本だけではなく、米国及び欧州も同じだということは、先のサブ・プライムローン問題を見れば分かります。 どの国にとっても不動産価格が大きく変動することはマクロ経済にとってマイナスですので、当局は、それを抑えようと金融政策や窓口指導、規制等を行いますが、これらはすべて対処療法の域を出ません。 予防策は、不動産の動きを、データを活用し客観的に分析された情報を広く流布させるインフラの整備ですが、これが出来ている国はなさそうです。 勿論、日本の不動産環境も未熟ですが、不動産証券化が始まって未だ10年程度ですから、これから先、不動産実証分析に取り組む若い人が出てくるのを期待したいと思います。 |
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