コラムトップ
2009.10.30.Up Dated.
垂直合併

 日本リテールファンド投資法人(JRF)とラサールジャパン投資法人(LJI)が来年3月に合併を行うと発表しました。
先に合併に向けて動いていたのは、スポンサー企業の破綻に因る救済合併でしたが、今回は大が小を飲む垂直合併になります。
これで、REITの合併に新たな展開が加わり、後は対等合併が起これば全てのメニューが揃います。

今回の合併は、JRFの総資産が7,000億円を超えますから、主として規模のメリットを追求した合併だとも言えなくはありません。
一方、LJIからすれば、今の市場状況では、なかなか活路が見出せませんので、買い手がある内に合併に応じるという選択になったのだと思われます。
LJIのスポンサーであるラサール インベストメント マネジメントにとっても、REITを維持するよりも出口を選択した方が良いとの判断になったのでしょう。
そこで、この合併の評価ですが、規模の拡大は、ある程度投資家にアピールはするでしょうが、元々JRFはREIT第2位の資産規模を有していましたから、やはり質の改善が求められます。
然しながら、質の改善には時間を要しますし、商業施設のパフォーマンス悪化はもう暫くは覚悟しなければなりませんので、LJIの保有しているオフィスビル・レジデンスを売り食いして繋ごうと考えているのかも知れません。
合併比率(1:0.295)から見れば、それも充分に可能ですから、その間に財務体質の改善を図れれば、市場評価を戻すことも可能となります。
本来、合併の目標はエクイティ戦略の構築が本丸なので、JRFは中期的に考えているのだと思います。
従って、今回の合併で直ちにJRFの市場評価が大きく上昇するとは思われませんが、時間と手段を得たので、今後のハンドリング次第だと言えます。

次に、REIT全体にとっては、イーアセット投資法人→ラサールジャパン投資法人と名称を変えたこの銘柄は、存続可能性の問題を抱えていたので、このような銘柄が統合されるのは市場全体にとってプラスです。
LJIの投資家にとっても、単独よりも統合される方が、成長戦略が描き易くなりますから、悪い話ではありません。
REITの合併については、この先も新たな動きがあるかも知れませんし、関係者の関心も高まっていますので、筆者も11月にはREITの合併について2つのセミナーに参加してこの問題を取り上げます。
そしてこの期間には、日本アコモデーションファンド投資法人の増資、ケネディクス不動産投資法人の増資が行われ、更に増資案件が続くかも知れませんので、この秋はREITにとって大切な転轍機になるのではと考えています。

 
Copyright (c) SYC Inc. All rights reserved.