コラムトップ
2009. 5.29.Up Dated.
REITデータ分析の意義

 ここの所REITの話題が少なくなり、世間の注目度も低下したように思えますが、一方で、誕生から8年を経たことでかなりのデータが蓄積されました。
REITが公表するような不動産に関する詳細なデータが入手出来る環境になったのは、不動産に携わってきた40年間で初めての状態です。

私は過去に何度か不動産のデータを分析して傾向や対策を考えた事があります。当時は収集出来るデータは少なく、且つ、信頼性も低いものでしたが、データ分析の有用性だけは感じていました。
かなり前の話になりますが、大規模マンションの販売の際に、モデルオープン期間(約3週間)の来場者数を予測し、受入体制の準備と販売率の予想を立てた事があります。
このプロジェクトは7期に分割して販売しましたが、1・2期は予想がうまく立てられませんでしたが、3期以降からはそれまでのデータを活用して、かなり精度の高い予想が立てられるようになりました。
この時のモデルルームオープン期間の来場者数は3,000人〜4,000人でしたが、事前の予想と実際の来場数の誤差は十数人単位まで縮まり、販売率はほぼ予測と同じになりました。
顧客の来場者数というのは不確定要素の大きいものですが、データを詳細に収集して蓄積すれば、それすらも予測可能であり、ある程度コントロール出来るという経験をしました。
この時代の不動産は<感>と<経験>だけが頼りでしたが、私は何とか科学的なアプローチが出来ないものかと考え、様々なデータを収集し分析することで予測と対策を立てる方法に挑戦しました。そして、この時の経験から学んだことは何よりもデータの信頼性と目的に応じた詳細さでした。

このような視点で、REITの公表するデータを見ていると、私にとってはデータの宝庫であり、色々な分析を可能とする新しい不動産の時代の到来を感じます。
現在収集に注力しているのは、銘柄毎の財務分析データの時系列の収集と個別物件の稼働率・賃料・利回りの時系列データですが、これらのデータからも色々な事が見えてきます。
後者のデータからは、賃貸収益の変動率が見えてきますし、その下限と上限も予測可能だと考えています。
又、財務分析データからは、各銘柄の置かれている現状とヒストリーが見えてきますから、この先どうなるのかという点もある程度予測出来ます。
REITも企業も同じですが、財務が組織の消長を表しますし、そしてその財務を作り上げるのは経営者の判断です。
財務を理解せず、場当たり的な経営を行っていれば、その結果は財務データに反映されますから、企業の能力を見る鏡にもなります。
中には、財務データから気の毒だと思えるぐらい厳しい銘柄もありますが、それはここに至るまでの過程に原因があります。
正確で、且つ、詳細なデータを収集し対策を考え実行する事が組織の本来の姿ですが、これが実際に出来る組織は少ないのが現実ではないかと思います。
 
Copyright (c) SYC Inc. All rights reserved.