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2008.10.22.Up Dated. |
REITのセルフディフェンス |
REITの投資口価格は依然として低迷していて、全銘柄が増資出来ない状態にまで陥っています。 一方、こういう状況をチャンスとして見てハゲタカファンドが活気付いています。 ニューシティ・レジデンス投資法人が破綻した事で、REITにも破綻リスクがある事で市場が動揺しているのに付け込んで、更に不安を加速させて、投資口価格を徹底的に下げる事で、破綻可能性を高める事が彼らの目的です。 REITが破綻すれば、保有不動産が売り出される事にもなりますが(彼らは投資家としても発言し、保有資産の処分を要求します)、その際にエクイティを大きく毀損させるような価格で処分させて安く買い受ける事が目的です。 例えばニューシティ・レジデンス投資法人の保有不動産のポートフォリオNOI利回りは4.5%程度(取得価格比)ですが、これを上手く買い叩いて8%以上で取得出来れば、バブル崩壊後に日本の不動産をバルク買いして大きな利益を得たあのドリームが再来します。 REITの保有している不動産は、私募ファンドのそれに比べると、質も高く管理もしっかりしていますから、これをバルク買い出来れば利益が約束されます。 視点を変えれば、こんな簡単に利益を得られるチャンスは滅多にありません。 従って、ハゲタカファンドから見れば、全REITが破綻する方が望ましいですから、容赦なく投資口価格を下げていきます。 彼らの立場に立てば、理屈はどうでも、論理的には無茶であっても、とにかく投資口価格を下げて破綻に至らせる事が、先ず最初の目標になります。 そして首尾よく破綻したら、投資家の立場で保有資産の早急な処分を要求し、一方で買い手として動きます。 今の状況では保有不動産をまとめて買える投資家は少ないですから、売却価格はいくらでも下げられますので、比較的楽なビジネスモデルになります。 特に、REITの中でもスポンサーの力が弱まっているレジデンス系は狙い目です。 レジデンスは賃料の安定性がありますし、立地によっては分譲マンション用地としても売却可能ですから、安く買えれば取り敢えず保有するだけで高い利回りを獲られる上に、1棟当りの総額がオフィスビルに比べると小さいために、将来の転売も比較的容易です。 一方、日本の投資家もこんなハゲタカファンドの思惑に添うように狼狽売りを続けていますし、気楽にREIT終焉論を語ったりしていますから、ますます楽な展開になっています。(深読みすれば、これらのマイナス論調もハゲタカファンドが煽っているとも考えられます) 海外のハゲタカファンドにとって日本の国益なぞには全く関心もありませんし、興味もありません。 単にビジネスチャンスを創出して利益の極大化だけが関心事ですので、何でもありなのです。 REITは、今こういう連中の標的にされていますが、誰がこの魔の手から守るのでしょうか。国内機関投資家でしょうか、それとも個人投資家でしょうか。 事はエクイティ市場から端を発していますから、本来は国内投資家ですが、投資家はマスとしては動けませんので、自衛力はあまり期待出来ません。 こうなると最後の砦は、国内金融機関になります。 新規融資はともかくしても、最低でもリファイナンスには応じて投資法人を存続させる事で、ハゲタカファンドの最初の目標である破綻を回避しなくてはなりません。 理屈も根拠もない投資口価格まで下げるのは、投資家の行動としては合点がいきませんが、前述のビジネスモデルで考えれば納得が行きます。 金融機関も個々の事情があって一律には動けないかもしれませんが、みすみす、海外のハゲタカファンドの思惑に嵌って国益を損なうのは愚かです。 また、政治と行政は国益を守るのが義務ですので、本来は最初に動くべきですが、感性の鈍っている組織なのであまり頼りにはなりません。 金融機関にとってREITの破綻は他人事ではありませんし、その影響がブーメランすれば、数倍又は数十倍の損失として戻ってきますので、ここは何としても防衛・自衛の観点で支えて欲しいと願っています。 |
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