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2008.10. 3.Up Dated.
最近のREIT状況

 先週、リプラス・レジデンシャル投資法人のスポンサーであるリプラス(株)が破産するという出来事がありましたが、今週は、大和証券SMBCに支援を要請していたパシフィックホールディングスが期限であった9月末に協議が整わなかった事で、オリジネーターとなっている日本レジデンシャル投資法人、日本コマーシャル投資法人の格付けが引き下げられる事になりました。

また、東証REIT指数も10月2日には1,101.16と急落しています。
東証REIT指数の急落は、株式市場と連動した動きで、震源地は米国の信用不安と景気後退予測ですが、何れにしてもJ-REITを取り巻く環境は厳しさが増しています。
特に、日本はかつてのバブル崩壊の残滓がありますから、マイナスの環境では投資家はリスク過敏に陥っています。
一方、J-REITはバブル崩壊後に作られた制度ですので、市場環境の変化に耐えられるような仕組みが用意されていますので、本来であればこのような時期に見直されるべき商品だとも言えます。
然しながら、前述の格付け引き下げを発表した格付会社を始めとして、信用不安の中でマイナス思考に支配される風潮が強くなっています。

REIT投資というのは、投資法人の発行する投資口投資ですから、本来は、投資法人の信用状態や保有資産の収益状態が優先されますが、冷静に見れば、これらの要素に大きな変化はありません。
元々、REITはボラティリティを小さくしてミドルリスク投資商品として開発されたものですから、環境の変化には一定度耐えられる仕組みなのです。
それにも拘わらず、一応プロと思われる機関投資家や格付会社も投資法人以外の要素に怯えてマイナス思考になっています。
格付会社は、オリジネーターの業績悪化が投資法人の財務運営状態に大きな影響を与えるという見方をしていますが、具体的に何を指しているのかという疑問があります。
REITの収益構造を見ると、特に大きな変化はありませんし、格付に関係する利払能力も大手デベロッパーより高いのが実態です。
強いて挙げれば、金融機関の貸し渋り、又は、貸し剥がしによって生じる借入金の返済リスクが問題ですが、これとても根拠希薄な金融機関の融資姿勢によって生じているリスクです。

誰かが不安に怯えて走ると、皆も走り出すと言う群集心理のような状態になりつつありますが、これは同一性を多とする日本のカルチャーのせいだとも言えます。
このカルチャーは冷静に考えれば愚かしいのですが、実は心地よさがあるので離れ難い魅力があります。
投資の世界でもこのカルチャーが生かされていて、個別性を重視する見方はマイナーなままですが、この風潮が続けば、個人投資家は馬鹿馬鹿しくなって違う動きを始めるかも知れません。
そうなれば、日本の投資市場も一歩前進しますから、あながち悪いことばかりではないのではと思っています。
 
 
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