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2008. 9. 5.Up Dated.
J-REITのエクイティ投資

 J-REITは外部成長のために、ローンによるデッド調達と増資によるエクイティ調達を行います。
デッド調達が以前に比べると厳しくなっていますが、一方、エクイティの調達環境も悪化しており、今は双方とも厳しくなっています。
因みに、J-REITのエクイティ調達状況を過去に遡ってみると以下のようになっています。

◇グラフ:J-REITのエクイティ調達推移

※データは平成20年8月末現在です。POには第3者割当増資も含んでいます。


上のグラフをみると、POによるエクイティ調達は05年、06年、07年の過去3ヶ年は4,000億円を越えていますが、08年はこのペースで行けば、最大でも3,500億円程度だろうと思います。
J-REITのエクイティとデッドの調達は、不動産の取得需要に直結しています。
資金調達がタイトになれば不動産市場での買い需要を減少させますから、不動産価格に大きな影響を与えます。

参考までに、実際に投資法人が追加取得した額を調べると、次のようになっています。
◇既存銘柄の追加取得合計額
2004年 4,699億円
2005年 6,847億円
2006年 8,174億円
2007年 12,344億円
2008年 7,619億円

07年は過去最高の1.2兆円の買い需要を起こしましたが、08年は恐らく8,500億円程度であろうと思われます。
更に、エクイティ調達額の減少の影響は3ヶ月〜半年程度遅れて影響が出ますから、このまま行けば09年の第1四半期まで買い需要が減少しますし、依然として厳しい資金調達環境が続けば、09年のJ-REITの取得需要は、04年並みの5,000億円程度になる可能性もあります。

以前であれば、私募ファンドがJ-REITの倍近い買い需要を持っていましたので、J-REITの動向の影響はそれ程でもありませんでしたが、今は私募ファンドの買い需要は極端に細っていますから、確実に読めるのはJ-REITの数字だけです。
従って、ピークの07年と比較すると、09年のREITを含めたファンドの買い需要は20%程度の大幅な減少になってしまう可能性もありますので、この場合、不動産価格は大きな影響を受けます。
この事をどのように考えるかは、立場によって異なりますが、少なくとも急激に需要を減少させるのは問題が大きいのではないかと言えますので、行政当局や金融機関はJ-REITの需要をウォッチしながらの金融政策や融資姿勢が必要ではないかと考えます。
 
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