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2008. 8.29.Up Dated.
静かなる投資

 例年、J-REITや不動産業界にとって夏は小休止の期間です。
尤も、デベロッパーは、暑い盛りは分譲マンションのモデルルーム来訪者も減りますので、現在の販売状況では開店休業状態の現場も多かったと思います。
しかし、投資市場では今年はやや様相が違い、色々な動きが出ています。

今、海外からは日本の不動産セクターとその関連業種の行方に注目が集まっていて、情報収集を活発化しています。
先日、中堅デベロッパーのアーバンコーポレーションが破綻しました。
業界内部ではシナリオ通りという見方もあり、比較的ショックは小さかったようですが、こういう破綻に海外勢は興味を覚えているようでもあります。
アーバンコーポレーションを中堅デベロッパーと称しましたが、この会社は東証一部上場の会社でしたから、海外から見れば主要デベロッパーの一つと見られなくもありません。
通常、このような事象を見れば、不動産セクターへの投資に慎重になるのが常ですが、海外勢は不動産及び関連業界の淘汰のメカニズムを理解し、その行方を探ることで投資チャンスを見出そうとしている節があります。
即ち、淘汰の時期を生き残れる会社には、次のピリオドで果実が得られるという発想です。

そこで問題になるのは、何処が生き残るのか、そして生き残れる条件は何かという事ですが、デベロッパー側の説明ではこれは明確ではありません。
明確な説明が出来ないのは、市場の変化が読みきれていない事と、これからの時期に必要な経営戦略が定まっていないためだと言えます。
勿論、大手デベロッパーの一部には、ある程度の見通しとこの時期に見合った展開を準備している企業もあるようですが、当然そのような事は外部に漏らしませんから投資家には伝わりません。
然しながら、それを何とか判別する事で新たな投資を起こそうとしているようで、この夏は海外勢の企業訪問が活発化しているようです。
そして海外勢の投資スタンスは、なるべく目立たないようにして、投資利益を得ようとしていることです。
仮に国内で目立ってしまえば、一挙一投足が注目されてしまい、上手く売り抜ける事が出来ませんので、投資家としては失格だという事です。

そこで気になるのは、J-REITの投資口価格の行方です。
海外勢はJ-REITにも強い関心を寄せていますので、水面下で徐々に買い集めるという動きになる可能性があります。
恐らく、J-REITの投資口価格は、年内は今の状況と変わらないでしょうから、しばらくは潜水状態で動けます。
こうなると、J-REITの行方がますます分かり難くなりますが、逆にこれを読み解き自分なりの予測を立てて動くという投資本来の行動が出来る時期が到来しつつあるとも言えますので、このような投資が面白いという人には良い時代になりつつあるのではないかと思います。
 
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