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2008. 7. 4.Up Dated.
産業ファンド投資法人の増資中止

7月1日に、産業ファンド投資法人(IIF)が、予定していた増資と物件取得の中止を発表しました。
増資発表後の株価の推移を見ながら、果たしてこのまま増資をするのであろうかと私も疑問を持っていましたが、やはり中止に追い込まれました。
先日、増資の払込を完了したユナイテッド・アーバン投資法人の増資価格が、増資発表前の60万円台前半の株価から24%も下がった471,000円/口になりました。
このように予想を超えるような事態を見ても、現在の資本市場における資金調達は厳しさを増しています。

上場済投資法人が増資を中止するのは、IIFが初めてですが、内容的には止むを得ない措置です。
IIFのLTVは、平成19年12月期では41.1%でしたが、その後「羽田空港メンテナンスセンター」を422.1億円で取得した事で、60%ぐらいまで上昇しています。
既にこの状態でも増資必至でしたが、更に331.4億円分の資産を追加取得する予定で増資を発表しました。
IIF側の目論見では増資によって300億円程度調達して、LTVを50%程度に下げる予定でしたが、株価が下がった事でエクイティ調達が100億円程度ショートして57%ぐらいにしか下がりません。

これでも、無理して増資をすることは可能ですが、問題は投資口簿価が大幅に下がることです。
従前の投資口簿価(出資総額の1口当り価格)は462,192円でしたが、今回の増資を強行すると、388,000円/口ぐらいまで下がってしまいます。
この投資口簿価はJREITでは最低の水準になり、例えばグローバル・ワン不動産投資法人の投資口簿価に比べると半分になります。
投資口簿価が低いと発行口数は多くなり、希薄化が進行して今後の配当力を極端に低下させます。しかも、投資口簿価を短期に上昇させることは出来ないので、その影響は長期に亙って利いてきます。
従って、IIFがここで無理して増資を強行すれば、長期低迷は必至ですので、増資を中止せざるを得ません。

このように考えると、増資中止は当然の措置だとも言えますが、本質的には、株価が50万円台にならないうちに増資を目論んだ甘さが問題です。
IIFの上場は昨年10月でしたが、既にこの時点ではJREIT市場も調整に入っていて、投資環境も不動産市況も変化していました。潮目が変わっていながら、その影響を冷静に見られなかった事、そして、今後の予測を見誤った事が今回の増資中止の遠因です。
それでも、株価が堅調であればトライする価値はありますが、株価自体低調でありながら、半分負け戦覚悟で増資を計った事が問題です。

一方、フロンティア不動産投資法人が7月1日に増資を発表しましたが、こちらの投資口簿価は530,639円/口ですので、現在の株価と比べると未だ余裕があります。
但し、ユナイテッド・アーバンのような例もありますから楽観は出来ませんが、おそらく払込までは行くであろうと予想されます。
何れにしても、現在のJREITはデッドとエクイティ調達の両面で難しくなっていて各銘柄も苦労していますが、「夜明け前が一番暗い」と言われますので、ここが我慢の為所だと思います。

 
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