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2008. 5.30.Up Dated.
REITの総資本回転期間

 REITの特徴を表す指標の一つとして、財務分析指標の中の総資本回転期間(平均総資本÷月間営業収益)があります。
REITの場合、大半が144ヶ月(12年)〜168ヶ月(14年)に分布しています。
この数値を下記の不動産企業3社の財務諸表から抽出して比べると、次のようになっています。
三井不動産 30ヶ月
三菱地所 50ヶ月
平和不動産 75ヶ月
※数値は過去3年分の連結決算財務諸表から算出した平均値
ご覧のように、REITはデベロッパーと比較しても、非常に長い回転期間を持っています。
不動産事業会社では3〜5年、不動産賃貸業と言える平和不動産でも6年強です。
この数値には業種特性があって、元々、不動産業は長くなる傾向にありますが、製造業では1年程度、卸業では半年程度というのが一般的です。
このように一般事業会社と比べると、REITというのは、非常に長い総資本回転期間を持っているのが大きな特徴だと言えます。

これだけ資本の回転が長期になると、その財務戦略は一般事業会社とは異なったものが求められます。
先ず、資金調達方法を考え直さなくてはなりませんので、回転期間に見合う長いサイトの資金を集める必要が生じます。
逆に、短期借入金等で負債を構成してしまうと、長い回転期間の間に金利が何十回も変動してしまい、総資本利益率(ROA)のボラティリティが高まります。
然しながら、10年を超える借入金というのはありませんので、なるべく長期の資金を導入したり、又は、長期の投資法人債で調達したりする事になります。
そして、究極は返済の必要のないエクイティで賄うという事になります。

このような事から、私は以前からREITの資金調達は投資法人債が本命で、且つ、極力長い償還期間が良いと主張しています。
REITの投資法人債発行が始まった頃に、3年の投資法人債を発行した銘柄に対して「相対的にコストの高くなる投資法人債を3年とは何ですか」とクレームを付けたこともありました。
現在は、市場も長期借入金比率を注目するようになっていますが、もう少し進んで総資本回転期間に見合った資金が集まっているか否かを見るようになれば、銘柄の見方も深化すると思います。
他にも、財務の切り口でREITを比較する事が出来ますので、今後はこういう定性指標も活用しながらREITを見ていくようになれば面白いと考えています。
 
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