◇コラムトップ |
2008. 5. 9.Up Dated. |
J-REITの定性分析 |
この連休の間に、JREIT投資法人の財務分析をしましたが、内容的にかなり面白い分析結果が出ました。 JREIT投資法人の財務分析は、JREIT誕生時からの課題で、雑誌社でも何人かの執筆者に当っているようですが何れも断られているようです。 その最たる理由は、分析の基になるデータが少ない事、そして財務分析だけではJREITの比較が出来ないという事でした。 今日では、決算回数も増えてデータは多くなりましたが、42銘柄の平均上場年数が2.5年程度しかないので、時系列分析が弱いのが難点です。 それでも6期3年程度の時系列データが採れる銘柄を抽出すると、その投資法人の歩んできた道筋が見えるような気もしますし、それぞれの財務戦略の違いも浮き出てきます。 また、投資法人の財務分析データを不動産企業のデータと比較して見ると、その違いも明らかになります。 その違いの一つに自己資本比率があります。 銘柄によってはこの率が60%を超えているケースもあって、一般企業の20%台とは大きく乖離しています。 元々、不動産賃貸業は長期資金によって負債を賄うのが原則ですが、JREIT投資法人は一般の貸しビル業より、更に長期の資金が必要となるので、返済義務のないエクイティを多く集めるという財務構造になります。 日本の企業も戦前は50%程度の自己資本比率を持っていたそうですが、戦後は間接金融が主体となり、自己資本比率を落としたようです。そのため、企業への金融機関の影響力の方が大きくなり、株式市場の力が低下したとも言われています。 JREITの自己資本比率は50%を超えている銘柄も多いのですが、一方、LTVも50%近いですから、今のところ投資市場と金融機関の両方の影響を受けていますが、強い銘柄(高株価銘柄)は市場の影響力の方が大きくなります。 これが、私募ファンドとなるとLTVが70%程度になっているために、金融機関の影響力が絶大です。 最近は、私募ファンドの人から「エクイティは集まるのだけどデッドが・・・」という声が多く聞かれますが、私募ファンドの仕組みでは、エクイティよりもデッドが重要ですので単なる繰言に過ぎません。 従って、もしこれからも生き残る私募ファンドがあるとすれば、それはJREIT並みに自己資本比率を上げられるファンドではないかと思います。 |
Copyright (c) SYC Inc. All rights reserved. |