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2007. 9. 7.Up Dated.
不動産価格の行方

 最近は、不動産価格の今後の行方についてマスコミの取材が多くなっています。
従来であれば、私に対してではなく、不動産業界関係者や不動産鑑定士等のコメントを求めるのでしょうけれど、サブプライムローン問題の影響や海外投資資金の動き等の関係から日本の不動産価格を考えるには、JREIT関係の私にも聞いてみようという事になるようです。
このような取材の時に、最初に申し上げていることは、日本の不動産=東京の不動産という図式は最早成り立たないという点です。
従来の考え方では、日本の不動産は東京をピラミッドの頂点として捉えていましたが、現在の東京の不動産は、ニューヨークやロンドンとの比較の方が望ましくなっていますし、又、東京の不動産の趨勢がそのまま地方都市に波及するという見方は出来なくなりつつあります。

その根拠は海外投資資金の流れにあります。
グローバルに分散投資する資金では、ニューヨーク・ロンドン・東京等は必要な分散先になりますが、東京の後が大阪・名古屋になる訳ではありません。アジアでは上海・香港・シンガポールのクアラルンプールもありますし、オーストラリアもあります。 又、欧州には他にも投資対象となる都市がありますし、米国にもいくつも都市があります。
こうなると海外投資資金が果たして日本の東京以外の都市に流れ込んで来るのか分かりません。
勿論、JREITや不動産私募ファンドを通じて一部の資金は地方都市にも流れていますが、これは資産運用のオプションであって、必ずしも投資家の要求ではありません。

不動産価格の形成根拠は、マネーを通じた富の集積度ですので、不動産価格を考えるには、より大きな資金の移動を見なくてはなりません。
既に東京の不動産は日本の富(GDP)だけでは計れなくなっていますので、国内事情だけを前提としていては分かりません。
この観点では、東京の不動産は、グローバルな投資資金の移動とマクロ経済の動きとの相関関係になっていますので、従来の不動産的視点では役立ちません。
だから私にと言うつもりは毛頭ありませんが、このような視点で不動産を考えようとしている人が未だ少ないからだと思います。

更に、予想や予測には根拠となるデータが必要ですが、不動産会社はこのようなデータを開示することなく、一方的に感想だけを述べます。
例えば、賃料上昇予測を述べるのであれば、少なくとも保有物件の平均賃料の過去のデータを開示した上で、それらのデータの動きに基づいた解説が必要です。
JREITのように各保有物件の賃貸収支を開示した上で、今後の傾向を述べるのであれば、客観性もありますが、データを開示することなく感想だけを述べるのは単なる主観でしかありませんし、一歩間違えば恣意的又は作為的なものとなります。
金融商品取引法がこの9月30日から本格施行になりますが、投資家のミス・ジャッジを誘発する可能性のある予想を何の根拠も示さず公表することは、慎重に考える必要がありそうです。
 
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