2月8日のコラムで「JREITの導管性」について書きましたが、その後の顛末が一応明らかになりましたので改めて触れてみたいと思います。
今年から始まった株式大量保有報告の届け出と開示によって、プロスペクト・アセット・マネジメント(プロスペクト・レジテンシャル投資法人のオリジネーター)が、JREIT12銘柄の投資口を大量に保有していることが分かりました。
なかでも、FCレジデンシャル投資法人の投資口を最も多く保有していて、
・第一位: プロスペクト・アセット・マネジメント(発行済投資口数の32.48%保有)
・第二位: JPEキャピタル・マネジメント(発行済投資口数の9.61%保有)
・第三位: 日興アセットマネジメント(発行済投資口数の7.44%保有)
と上位3者の投資主の合計保有率が49.53%となっていて、税法上の取扱いである同族会社の認定基準(上位3者の保有比率が50%超)に触れそうになりました。
実際に、その後もプロスペクト・アセット・マネジメントが買い進み、33.52%の保有比率になり、この時点では、上位3者の保有比率が50.57%と同族認定基準を超えてしまいました。
FCレジデンシャル投資法人の直近決算期は4月なので、4月末時点(実質的には4/23)の投資主名簿で同族認定基準を越えていれば、法人税が課されるようになり、結果として配当金が予想配当金の約6割に減少する可能性が生じました。
この問題については今年の1月中旬から分かっていて、複数のマスコミからも問い合わせがありましたが、対策としては、オリジネーターが動くしかないという状況でした。
幸いにも、ぎりぎりのタイミングでFCレジデンシャル投資法人のオリジネーターであるファンド・クリエーションが1位と2位の投資主から700口を買い取り、上位3者の保有比率を48.43%まで引き下げて、税法上の同族認定を回避しました。
一応、これで当面の危機は回避しましたが、この問題は尾を引きそうです。
ファンド・クリエーションとプロスペクト間でどういう話合いがあったかは分かりませんが、700口という口数とその買取価格を見ると、これで決着したとは思えません。
また、プロスペクトが同族認定基準を超えるような保有をした意図も明確ではありませんから、引き続き注意を以って見守る必要があります。
この事は、株価上位銘柄や大規模銘柄にとっては「対岸の火事」でしょうが、株価が低い銘柄や規模の小さい銘柄にとっては大きな問題となっています。
これに関連しているのかは分かりませんが、ビ・ライフ投資法人とLCP投資法人が第3者割当による増資を行ったことも一応の対策になっています。
元々、JREITは上場後に資産規模拡大と増資を繰り返して成長する循環に入らなければ成功しない仕組みですので、株価が低迷し増資もままにならないような状況に陥ると様々な問題が発生します。
従って、私は私募ファンド等がJREIT進出を図ろうとしていると「JREITには出ないほうが良いですよ」と以前から言い続けていました。
上場後の明確なシナリオと展開、そして戦略がなければJREITは難しいのですが、そこまで考えずに進出してきたツケが回ってきているのではないかとも言えます。
|