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2007. 1.26.Up Dated.
株価の天井


 日本ビルファンド投資法人の株価が独歩高になっており、市場がこの銘柄を使ってJREIT株価の天井を探る動きをしているようです。 一時は180万円/口を超えて、次期予想配当率2.0%近くまで上げましたが、また戻しています。
これらの一連の動きを見ていると、JREIT株価を長期金利との関係で計っているようで、10年物長期国債とのスプレッドをどの程度にするかを確かめていると思えます。
元々、社債等のデットと異なり、エクイティではスプレッドの基準がなく、JREITが登場して初めて市場が意識するようになったとも言えますので、現在は試行段階だと見られます。

一方、中長期投資姿勢の投資家にとって、日本ビルファンドのような株価の動きは、必ずしも歓迎出来ません。 特に保有口数の少ない個人にとっては、ここまで株価が上昇すれば売り時を考えるようになるのも仕方ないとも言えます。
日本ビルファンドの第1回増資(平成16年7月)価格は759,500円/口で、第2回増資(平成17年8月)価格が916,300円/口、そして第3回増資(平成18年3月)価格が1,019,200円/口でしたので、第1回の増資で購入した人は100万/口程度のキャピタルゲインが得られます。 配当金に換算すると約26年分になりますので、インカムゲイン投資商品と割り切るのは難しいと思います。
また、長期金利とのスプレッドで株価が形成されるとすれば、何れ長期金利が上昇するのは必至ですので、その際には株価調整も行われますから、時限爆弾を抱えているようなものです。
尤も、超強気な投資家は米国REITを参考にして、国債並かそれ以下もあり得るという見方をするかも知れませんが、今のところ日本ビルファンドは積極的な内部成長を図るという意図はなさそうですので、成長期待の株価は根拠が薄弱です。
従って、今の動きは日銀が金利引き上げを行うまでのチキンレースと見るのが妥当ですが、ヒートアップしている時はブレーキが掛かりにくいのが一般的です。

逆に、今の状況を銘柄側から見ると、迷惑というのが本音かもしれません。
株価がここまで上昇してしまえば、増資価格の維持というハードルが高くなりますから増資を逡巡しなくてはなりませんし、外部成長によって資産の質を改善する事も躊躇します。(追加取得資産のNOI利回りの低下によって配当金を減少させる事が難しくなります)
JREITを真面目に、且つ、慎重に運用しようとしてきた資産運用会社にとって、ここまで株価が上昇すれば打つ手がなくなると言っても過言ではありません。 また、投資商品の性格としても、JREITの領域を超えてしまったとも言えますから、これから日本ビルファンドは何処へ行くのかという心配もあります。
まともに考えれば、JREIT投資家にとっても銘柄にとっても今の状況は不幸とも言えますが、株価はコントロール出来ませんので成り行きに任せるしかありません。
市場が無茶な冒険を止めて、早く正常な価格を探る動きになるように祈るしかないというのが、良識ある見方ではないかと思います。