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2006.12. 8.Up Dated.
J-REITの鑑定評価


 JREITでは、物件を取得する時と決算毎に、不動産の鑑定評価を取る事が義務付けられています。しかし、果たして鑑定評価で表わされる価格とは何かという根本的問題があります。
表示上では参考価格と謳われていますが、JREITのような投資商品では、投資価値の参考価格なのかそれとも不動産価値の参考価格なのかも明確でありません。
実際の不動産取引では鑑定評価額が参考価格として扱われる事はあまりありませんが、その理由は取引価格と鑑定価格が一致しないからだと言えます。

JREITでも、資産売却が行われた際に、売却価格と直近の期末鑑定価格を比べるとかなり差があります。
今年の6月にジャパンリアルエステイト投資法人が売却した「JALセールスビル」の売却価格は2,593百万円でしたが、直近期末(2006/3)の評価額は1,490百万円でした。 その価格差は74%になりますので、これではとても参考価格とは言えません。 又、同じジャパンリアルエステイト投資法人が売却損を出した「新横浜ファーストビル」は売却価格が1,755百万円で直近期末(2006/3)の評価額は1,640百万円となっていて、その差は7%ですが、1億円以上も差があれば取引の参考価格とは言えません。 更に言えば、「新横浜ファーストビル」の取得時(2001/9)の鑑定評価額は3,010百万円でしたから、約5年で半分近くまで下落した事になりますが、これは価値が下落したと言うより、本来の価格は3,010百万円ではなかったとも言えます。
勿論、このようなケースだけではないと思いますが、JREITの資産売却をチェックすれば、やはり鑑定価格と取引価格の乖離が目立ちます。 これでは鑑定評価額が不動産価値の参考価格とは言えないとも思えますが、このような現実を見てJREITに鑑定評価を義務付けた行政当局はどう考えるのでしょうか。

JREITでは物件取得時と決算期に鑑定評価を取りますから、その費用はかなりの額になりますが、全て投資家の負担となります。 費用を支出する以上、それだけの価値を求められますが、残念ながら、現在の鑑定評価に充分価値があるとは思えません。
この実態を鑑定評価の習熟によって改善しようと動きもあるようですが、それよりは、JREITにおける鑑定評価自体を見直す事が必要だと思えます。
独断と偏見で敢えて言えば、仮に鑑定評価の手法を見直したとしても不動産価値を表すという所までは到達しないと思いますので、投資家に誤解を与えないよう制度を改める時期に来ているのではないかと考えています。

 
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