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2006.11.30.Up Dated.
BIS規制について


 金融庁が、金融機関の投融資のリスク算定を見直す動きになっています。
このような動きは過去にもあり、その都度、金融機関の投融資姿勢に大きな影響を与えていますが、今回は、融資部門ではリスク算定が緩和され、投資部門に厳しい基準が適用されそうです。
投資の中で、特にファンドへの投資のリスク算定が大幅に引き上げられる可能性が高く、今後の金融機関のファンド投資を抑制する事に繋がりそうです。 金融庁は、金融機関のファンド投資については昨年より懸念を持っていましたので、これを具体的な基準で抑制するという事なのかもしれません。
このファンドにJREITが含まれるのかは明確ではありませんが、常識的に考えれば上場市場のある有価証券ですから株式投資と同じリスク・ウエイト(100)になるとも思われます。 然しながら、JREITの仕組みを考えれば、投資元本が株式のように0になるという事は想定しにくいのも確かです。
一般的には、純資産価値が投資元本の理論的上限値を示すと考えられますので、高株価銘柄でも約半分、その他の銘柄では70%〜100%だとも言えなくはありません。
一方、中小企業向け融資のリスク・ウエイトは緩和される方向のようで、私募ファンド等へのノンリコース・ローンもこれに該当します。
最近のノンリコース・ローンは掛目も抑えられていて、以前に比べると回収リスクは確かに低減していますが、償還時にリファイナンスするしか方法のないファンドへの融資には不安が付き纏います。
逆に、JREITへの融資はかなり固い融資で、LTVも概ね50%以下になっていますし、多くの銘柄でDSCRも2桁に近くなっていますから、こちらは金融機関は積極的ですが、最近ではJREITへの融資も銘柄選別の傾向があります。
各銘柄が発表する調達金利の動向を見ていると、銘柄によって格差が広がっていて、株価低迷銘柄ではかなりのスプレッドを要求されています。
不動産ファンド事業というのは歴史も浅く、淘汰の波も潜っていませんので、金融庁の基準設定が厳しくなるのは当然ですが、金融機関側ももう少し慎重になるべきだと言えます。
ファンドを一律に見て投融資を行う事は論外ですし、投融資金の使途や対象となっている不動産のパフォーマンスや相対的価値に注意を払う必要があります。
特に、地銀・信金クラスは比較的モニタリング情報が入手し易いJREITでさえ必要な情報や分析を収集しているとは言えない状況にありますから、私募ファンドへの投資に至っては、更に問題もあると考えられます。
都銀の再生については一応の目途がついた状況ですが、地銀・信金クラスはこれからという状態ですので、今後の公的資金の導入等で杜撰な投融資が表面化すれば、又、社会問題・政治問題に波及してしまう可能性もあります。

 
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