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2006. 9.28.Up Dated.
政権交代とJ-REIT


 安倍新政権が発足しましたが、株式市場・債券市場とも今のところは様子見という状態のようで、特段の動きはないようです。 一方、JREITのような投資商品では、政権交代といってもあまりピンときませんが、間接的な影響はあるかも知れません。

今後の経済政策の中で、緊縮財政を維持して国債の増発を少なくするという方向が確認出来れば、債券市場の利回りが大きく上昇することはなさそうですが、逆に、格差解消という名目で税金のバラ撒きが行われ、国債が増発されるようになれば長期金利が上昇します。
安倍新政権でも直ちに消費税の増税が行われる可能性はなさそうですから、仮に、公共投資を活発化すれば、国債依存の体質は変わらないと判断されてしまいます。
日銀の金融政策転換によって短期金利は上昇しましたが、幸いにも長期金利は小康状態を保っていますので、再び公共投資が活発に行われるような雲行きになれば、一挙に債券市場が反応する可能性もあります。
そうは言っても、小泉政権下で我慢していた地方選出議員が挙党体制の大義名分を使って、新政権発足を期に少しでも予算を獲得しないと、この先も利益誘導の見込みがなくなりますから、必死に動くのではないかと予想されます。
こうなると、貯蓄から投資に向っている個人金融資産が狙われ、証券税制によって緩和されていた株式等の有価証券の譲渡益と配当に対する課税が見直しになる可能性が高くなります。
現在の税率は10%になっていますが、この税率は2007年迄の緩和税率で、2008年1月からは20%に戻るとされていますので、安倍新政権下でどのように扱われるかは注目です。
折しも、団塊の世代の定年退職によって、個人金融資産が膨れ上がる時期ですので、この金融資産が投資に流れれば税収が増えます。目先を見れば、この時期の税率上昇は財務省にとって美味しい財源確保になりますから、見逃すはずはありません。
一方、もう少し長い目で見れば、先ずは、個人金融資産の多くを投資にシフトさせることを優先するのであれば、当分は、税率を据え置いておき、充分に流れ込んだ時期に税率を上げればより多くの税収増となります。(タイミングとしては消費税の増税と合わすのも一つの方法)
新しい財務大臣は、この件については言及を避けていますが、果たして「今日の50と明日の100」を天秤に計るか、又は、面倒なので、取り敢えず個人からはしっかりと税金を取っておこうという判断になるかどちらかだと思います。
法人税の緩和や減価償却費の見直しは検討の俎上に上っていますが、個人に対する減税はいつも後回しになりますし、小泉政権下でも細かな所で実質増税を行っていますから、見通しとしては来年1月から20%の標準税率に戻る可能性が高そうです。

証券業界も個人税制となるとあまり積極的な動きはしそうもないので、政治判断としては比較的楽ですから、従来の政治の流れでは十中八九増税になると予想されますが、やや大袈裟に見れば、この件は安倍新政権の軸足が何処にあるのかを見定めることになるとも考えられます。

 
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