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2006. 8.10.Up Dated.
エネルギー問題とREIT


  世界的な原油高によってガソリン価格が高騰していますが、ガソリンだけでない他の燃料資源にも波及しているようです。
かつて何度も省エネが叫ばれて燃料資源の節約が求められましたが、その度に、中途半端なブームで終ったようにも思えます。 それでも、家電商品等は、一昔前に比べると消費電力が減って着実に省エネに貢献しているようですが、不動産・建設ではあまり目立った動きがありません。
人々の活動の拠点となる住宅やオフィスビル等は大量のエネルギーを消費していますから、都市の排熱問題、地球温暖化の原因となるCO2削減についてもっと積極的な取り組みが欲しいところです。
REITは既に1,200物件ものオフィスビル・住宅・商業施設等を保有していますが、省エネルギーに真正面から取り組んだ物件が見当たりません。

私は、25年程前に、建物のエネルギーを細かく制御出来ないものかと、当時のゼネコンの研究所や東ガスに相談したことがありましたが、その時の技術では難しかったり、又は、研究中で実用化は未だ先という答えが殆どでした。
当時も今も同じですが、省エネ技術はイニシャルコストを引上げる為に、それをどのように負担するかという問題に直面し、導入を阻害します。
住宅は分譲が主流ですし、オフィスビルでは建築費用に応じた賃料設定が出来ない事で、発注者はイニシャルコストを抑えることが第一義となりますが、最近では、イニシャルコストを抑えることばかりに注力する傾向が目立ち、良質な建物を作る技術がすたれてしまう方向にあるようです。

このような方向は、今の経済状況や企業の利益至上主義から見れば変える事は難しそうですが、REITのように長期の視点を持った保有主体が登場した事に一つの可能性を見出せます。
既にREITの投資対象となる既存不動産が少なくなっていますので、そろそろ、長期保有のコンセプトに基づいた開発型の不動産に投資対象をシフトする時期が近づいているのではないかと思います。 現在の技術を以ってすれば、様々な省エネが可能ですから、その中から自分達の銘柄のコンセプトに合った技術を導入したり、又、メンテナンスを要したりする手法もREITであれば可能です。 デベロッパーの視点と体質では取り組めない手法も、REITでは採用出来る可能性も高いですので、考え方次第で変わります。
不動産市場では、既にREITが最大の買い手になっていますが、資金力にものを言わせて買うだけでなく、不動産の質の向上に一役買って欲しいと思います。 そして、投資対象とする不動産に対して、デベロッパー・建設業界に注文を付ける事も考えて欲しいと思います。
REITは僅か5年で不動産市場を席巻する存在にまで成長しましたが、これからはその力を社会全体の視点で不動産の質の向上に向けるようになってくれればと願っています。

 
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