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2006. 7.27.Up Dated.
J-REITの資産運用体制


野村不動産投信が、野村不動産オフィスファンド投資法人に次ぐ第2の投資法人として「野村不動産レジデンシャル投資法人」を設立しました。(上場時期は未定)
従来のJREITの運用体制は、一つの投資法人に一つの資産運用会社と一対一対応となっていましたが、今年2月に金融庁が兼業を認めた事で、一つの資産運用会社が複数の投資法人から運用委託を受けることが可能となりました。 兼業に関しては、グローバル・ワン不動産投資法人の資産運用会社であるグローバル・アライアンス・リアルティが私募ファンドからの資産運用業務委託の認可を受けていましたが、JREIT投資法人からの複数委託は野村不動産投信が初めてとなります。
元々、複数投資法人からの委託については日本リテールファンド投資法人の資産運用会社である三菱商事・UBSリアルティが認可取得に動いていましたが、この時はなかなか認可が得られなかったようです。

今回の規制緩和は、JREITにとって新たな可能性を開いたとも言えますが、今回の野村不動産投信のような動きだけでなく、既存投資法人への影響もありそうです。 即ち、既存投資法人の中で株価低迷によって思うように資産規模拡大を図れない投資法人が、従来の資産運用会社から別のJREITの資産運用会社に業務委託を行う道も開かれたとも思えます。 昨年7月からの上場銘柄の株価低迷によって、業界の一部では、JREITにもM&Aがあるのではないかとも囁かれていましたが、実際の投資法人の合併は技術的にかなり難しいと考えられましたので、投資法人はそのままにして資産運用会社を吸収ないし合併する方法もありそうです。
例えば、野村不動産投信のように、オフィス系の資産運用会社がレジデンスセクターの投資法人を欲しいと思うならば、既存のレジデンス系投資法人から資産運用業務の委託を受ければ、組成資産を集める手間が省けます。 この方法ならば、レジデンス銘柄の投資家に不利益はなさそうですし、経営基盤がしっかりしている資産運用会社に変更されるのは寧ろ歓迎するかも知れません。
但し、厳密に考えると、この方法にも問題があります。 レジデンスのように資産運用業務への負荷の大きいセクターを持つ事で、資産運用会社の組織が肥大化してしまい、充分なコントロールが出来ない可能性もありますので、仮にオフィスビル銘柄として高い市場評価を得ていても、レシデンス銘柄も取り扱う事でパワーダウンしてしまう恐れもあります。
JREITが2銘柄の時代に、私は、日本ビルファンドマネジメントにレジデンスも扱ってはどうかと尋ねたことがありましたが、当時の資産運用責任者は任が重過ぎるとの意見でした。 同じ事を日本プライムリアルティの資産運用会社にも申し上げましたが、やはり業務内容を考えて首を振りました。
このように、レジデンスを扱う利は認めるものの、資産運用業務への負荷から逡巡するのが以前のJREITの資産運用会社の本音だった事を考えれば、野村不動産投信にとっては冒険とも言えます。 それでも、JREIT投資のポートフォリオを考えれば、大規模オフィスビル+レシデンスという組み合わせは投資家にとって魅力的ですので、この流れはもう少し広がる可能性もあります。 JREITも誕生して5年になろうとしていますので、そろそろ応用問題に取り組むタイミングになったのかも知れません。

 
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