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2006. 4.27.Up Dated.
新生信託銀行に対する行政処分について
 
 4月26日付の金融庁報道発表資料で新生信託銀行に対して行政処分を行う旨の掲示がありました。
(詳細はhttp://www.fsa.go.jp/news/newsj/17/ginkou/20060426-1.htmlを参照)
行政処分の事由は、同行が取り扱った不動産信託業務に際して、対象物件の審査や価格査定が行われておらず、物件リスクが信託受益者に転嫁された為とされています。
簡単に言うと、不動産を証券化する場合には、不動産を信託銀行に譲渡して信託受益権化してからデットとエクイティを調達ないし募集しますが、この際、信託銀行の価格査定が行われる仕組みになっています。

 新生信託銀行の場合は、この価格査定を怠っていて、法令違反等のある建築物を信託委託者(証券組成側)から提示された価格をそのまま使っていたという事です。
内容としては、私募ファンドの物件が大半を占めているようですが、一部にはREITにも流れているとの記載があります。
「金融庁報道発表資料からの抜粋」
・・・加えて、当行による当該受益権の他者への譲渡の承諾が行われたものの一部には、一般投資家にリスクを負わせる可能性を認識しながら、不動産投資信託(REIT)への譲渡の承諾を与えている事例も、複数確認されている。
 この件については、既に、一部の銘柄(ニューシティ・レジデンス、DAオフィス、FCレジデンシャル投資法人、イーアセット)がHPで説明を開示していますが、JREIT保有物件の中で新生信託銀行が現信託受託者となっている物件はごく小数のようです。
これらは、信託銀行の審査や価格査定がないままにJREITの資産に組入れられている懸念がありますので、物件の瑕疵や価格の妥当性等について改めて新生信託銀行の査定が行われると思われます。

 以上が本件の速報ですが、JREITにとっての問題は、物件取得の際の法令違反等についてはデューデリー調査でチェックされ、且つ、資産運用会社のコンプライアンスチェックも受けますので、原則として法令違反の建築物が取得される可能性は小さくなっている事。
又、取得価格についても、独自に鑑定評価を行い、且つ、資産運用会社自らも価格の妥当性をチェックしていますので、仮に、新生信託銀行の物件審査や価格査定が行われていなくても、徒に投資家リスクを増やしているとは言えないのが原則です。
それでも、今回の金融庁の調査で複数の物件が紛れ込んでいるようですので、投資家にとっては充分問題となりますし、資産運用会社の当事者能力にも疑いの目が向けられます。
何処の銘柄のどの物件かを金融庁は開示しませんし、新生信託銀行の査定によって信託受益権価格が訂正されるか否かも不明ですので、銘柄側の発表を待つしかありませんが、HPで開示した前述の4銘柄の中で該当する物件は以下の8物件です。
  1. ニューシティ・レジデンス投資法人:「NCR新宿御苑T」
  2. FCレジデンシャル投資法人:「フォレシティ麻布十番」「アバンシェル赤坂」「フォレシティ尾山台」
  3. DAオフィス投資法人:「ダヴィンチ猿楽町」「ダヴィンチ茅場町376」「ダヴィンチ東池袋」
  4. イーアセット投資法人: 「ホテル日航茨木大阪」
 金融庁の指摘した物件がこの中に含まれているのかは分かりませんし、これ以外の銘柄の保有する物件なのかも現時点では明確ではありませんが、いずれにしても、REITを含めた不動産証券化商品では不動産固有のリスクと取得価格の妥当性を見極める事が投資の要諦だとも言えますので、投資家も市場も、物件の質に対してもう少し神経質になる必要があると思います。
 
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