◇トップ |
2006. 4.20.Up Dated. |
日本リテールファンド投資法人について |
先日、日本リテールファンド投資法人から証券取引等監視委員会の検査によって違法行為が発覚し、監督官庁である金融庁に対して行政処分を行うよう勧告が出されたとの発表がありました。 違法行為の内容は、投資法人設立から今日までに開催された役員会の一部で、実際に開催された日より後で開催されたかのように役員会議事録が作成されていたとの事です。 投資法人の手続きでは、決算発表や増資の際に役員会で決議し、その後遅滞なく公表するという規制が定められていますが、投資法人の実態を見ると現実的には遵守し難いという点が改めて指摘を受けたと言えます。 投資法人は執行役員と監督役員の3人ないし5人の役員だけで構成されている事業体ですが、このうち常勤しているのは執行役員だけだと思われます。 監督役員(執行役員数に+1名した数が必要)には、弁護士・公認会計士等の資格を有した方が就任するケースが多く、大半は本業を別に持っています。 その為、投資法人の決議を行う役員会では、監督役員のスケジュールによって開催日が動かされますので、イベントのタイミングと合わせるのが困難な場合もあります。 日本リテールファンド投資法人の場合、まさにこれに該当しており、監督役員2名のスケジュールによって、実際には、情報開示の前日から8日前に開催したものを当日に開催したと議事録を改ざんしたものです。 このような実態を証券取引等監視委員会が敢えて指摘した理由は何かというのが気になる点ですが、筆者は、単純に監督役員の数を増やしたり、又は、報酬を引上げたりして常勤させるという事を求めたものとは思えません。 視点を変えると、今回の指摘の本質を、投資法人のコンプライアンスの形骸化を看過しないという風に見る事も出来ます。 各銘柄の実態を見ると、JREITのコンプライアンスは資産運用会社のコンプライアンス委員会によって支えられているという図式になっていますが、本来は、投資法人にその責任があるのは明白です。 JREIT設立から今日まで見ていても、資産運用会社のコンプライアンス体制によって、オリジネーターとの利益相反が抑止されているという事実を明確に確認出来たケースもありませんし、コンプライアンス委員会の意見書や議事録が公開された例もありませんので、実際に、JREITのコンプライアンス体制がどの程度機能しているのかは分かりません。 この意味では、今回の行政処分勧告によって、改めてJREITのコンプライアンス体制を考える契機になれば良いと考えていますし、更に進んで投資法人は投資家保護に向けて為すべき事に積極的に取組むという姿勢を持つべきだとも言えます。 果たして、証券取引等監視委員会がこのような意図を以って、今回の検査を行ったのか否かは分かりませんが、銘柄数が増え、資産規模も膨張しているJREITの実態を見ると、ルーズな部分を見過ごすことは出来なくなっているとも言えます。 その意味でも、今回の日本リテールファンド投資法人のケースを他山の石として、各銘柄がコンプライアンスの意味と重要性を考えて、改善策を実施することが必要です。 その一つには、投資法人の執行役員と資産運用会社の代表者の兼任を安易に行わないという点もありますし、専任執行役員の人選に際してもオリジネーター出身者以外を充てるという方策も考えられます。 又、投資法人の役員がJREITに対する理解と造詣を深めるという事も必要です。 勿論、投資法人の役員の中には、私のセミナー等にも継続的に参加していてJREITを熱心に勉強されている方も居ますが、これは少数派です。 多くは、就任しても月数回だけ出社している程度のようですので、投資法人の実態をコンプライアンスの側面で改めて考え直す機会になってくれれば良いと考えています。 |
Copyright (c) SYC Inc. All rights reserved. |