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2006. 3.30.Up Dated.
国有財産の証券化について
 
 政府の財政再建策の一環として、国が保有する不動産や金融債権の証券化が検討されているようですが、JREITにとって不動産の証券化は関心があるのではと思います。
国が保有する不動産は、国民の財産ですので、証券化してエクイティに配当を出すことを考えると、特定の投資家に出資を募る私募形式には難があります。
又、証券化する場合に資産運用会社を何処にするかという問題もありますし、政府がエクイティを出資するスキームを採った場合には、オフ・バランス要件にも波及します。
国はバランスシート上のオフ・バランスもオン・バランスも実質的な関係はないといえども、民間に対してオフ・バランス要件の厳格化を求めていながら、自らは、埒外に置くというのも違和感があります。
 このように考えると、国が保有する不動産の証券化では、単純にJREITに売却するという手法が最も簡便のように思えますし、公募上場型のJREITであれば特定の投資家に偏るという心配もありません。
JREITの投資法人は投資家に利益をパス・スルーする導管体ですので、特定企業に利益をもたらすという批判も当たりませんから、JREITによる入札制で売却先を決定するという方法もあり得ます。
この程度の事であれば、当局も分かっているでしょうが、もう少し詳細にみればいくつかの問題があります。
JREITも既に32銘柄を数え、資産規模の大小の格差もあり、又、将来の継続可能性にも濃淡がありますから、JREITならば何処でもという訳にはいかないと思います。
更に、投資法人は導管体ですが、資産運用会社は一民間企業ですので、資産運用報酬という形でフィーが流れる事が気になるかもしれません。
例えば、JREIT最大銘柄である日本ビルファンド投資法人の資産運用には、オリジネーターの三井不動産が深く関わっていますので、仮に、日本ビルファンド投資法人に国有財産を売却したとしたら、結果として、三井不動産に資産運用報酬を流す事になります。
 こうなると、JREITの中でも銘柄をセレクトしなければならなくなりますので、いっそのこと、国有財産の受け皿となる新たな投資法人を設立してしまうという方法もあります。
しかし、政府が投資市場に参入するのは競争原理を妨げる事にも繋がりますから、これも問題があります。
又、証券化とは別に、保有する不動産を売却する場合、政府関係機関が入居している建物の効率的な使用をチェックするFM(ファシリティ・マネジメント)の視点も必要となります。

 このように考えると、財政再建の為の資産証券化には問題が山積していますが、見方によっては本来為すべき事や、考えるべき事が明確になるとも言えます。
国有財産は、国民の財産ですから、本来、合理的で且つ透明性の高い運用が行われるべきですので、このような機会に改めて国有財産についての関心と議論を高めるのは意義のある事ではないかと思います。  
 
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