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2005.11.24.Up Dated.
REITの取得する建物に関して
  
先日、千葉の設計事務所が建物の構造計算書を偽造した事件が発覚しましたが、このニュースはREITを含めた不動産・建設業界に、少なからずショックを与えたのではないかと思います。
今回のように、耐震強度を大幅に落とすような手抜き工事は例外としても、建物建築に際しての工事監理では、常に手抜き工事の懸念が付き纏います。
一般に、建物を作る側はコストに対しては敏感ですが、性能・品質に関しては後回しになる場合が多くなりますので、発注者が何処まで品質に対して厳格な姿勢を貫けるかがポイントになります。
現在、REITの全銘柄が保有する建物は約740物件ありますが、その大半は、既存建築物ですので、どのような工事が行われたのかは完成建物ではなかなか分かりません。
勿論、REITの場合は、取得時に建物エンジリアリング調査という形で、建物性能調査を行いますので、今回のような酷い物件が含まれる可能性は殆どありませんが、程度の差はあっても、多少の問題を引き摺っている例はありそうです。
REITはこれからも活発に物件取得を行ないますので、これを機に、建物の性能・品質についてのチェック体制を再度検討する必要もあると思いますが、今日のように取得競争が激化している中では、時間を掛けて建物のチェックをする余裕がない事も確かです。
このように考えると、REITの物件として望ましいのは、開発型事業案件で建築中の工事監理をREIT側でチェック出来る物件という事になりますが、REITの資産運用会社の体制だけでは難しいので、CM(コンストラクション・マネジメンント)業者の起用が必要となります。
又、レジデンスの場合には、予め建物性能保証を得るという方法も検討に値します。
但し、これらは全て取得コストとして必要となりますから、その分、利回りに影響を与えますので投資家に対して充分な説明がないと難しいかも知れません。
それでも、市場評価が低迷している新興銘柄では、今回を契機として、積極的に建物の品質維持に取り組むという事で市場の信頼を得られる可能性もありますので、特に、中堅デペロッパーがオリジネーターとなっている銘柄では差別化に有効だと言えます。
又、これからREITに進出しようとしている予備軍にとっても、充分検討に値しますので、出来得れば、目先のパフォーマンスだけに捕われずに資産の中味で勝負するという、愚直な銘柄の登場も期待したい処です。