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2005. 9.15.Up Dated.
J-REITが保有する中規模オフィスビルの傾向
  
最近上場するJREITでは、組成資産に中小規模のオフィスビルを含む銘柄が増えていますが、これにはいくつかの理由があります。
  1. JREIT市場がオフィスビルセクターを高く評価する傾向がある。
  2. 既存物件が中心になるので、建物価格を圧縮して、配当原資を捻出し易い。
  3. 従来、中小規模オフィスビルの買い手はJREITを除いた私募ファンドに限定されていたので、レジデンス等に比べて取得競争が緩く、比較的高キャップレートで取得する事が可能であった。
  4. 築古物件の売り物が多い。
  5. JREITの取得するオフィスビルのキャップレートが下がってきている。
等が挙げられ、私募ファンドからJREITに変わろうとしている企業は、私募ファンド時代に取得したこれらのビルを、JREIT保有のオフィスビルのキャップレートで、投資法人に転売出来るという道が生じた為でもあります。
元々、JREITの保有オフィスビルは大規模ビルが中心となってキャップレートが形成されていたので、不動産市場では大規模ビルに比べてキャップレートが高く取られている中小規模ビルを使えば、私募からJREITに移す時に転売益が手に入るという事です。
これには、資本市場が不動産市場のように築年数や規模によってキャップレートを上下させるだけの知識や経験がないという事も作用しています。
勿論、資本市場が不動産市場と同じ見方である必然性は必ずしもありませんし、異なった視点での取得もあながち否定は出来ません。
例えば、先日、ジャパンリアルエステイト投資法人が九段下の新築ビルを3.8%のキャップレートで取得しました。
このキャップレートは不動産市場の考え方からすれば、冒険過ぎるとも言えますが、ジャパンリアルエステイトのポートフォリオにとっては必要であるという見方も出来ます。
自銘柄のポートフォリオにとって、特に、積極的必要性のない銘柄は、今回の入札で4.5%前後のキャップレートで算出した価格を提示したようですので、如何に、ジャパンリアルエステイトが欲しかったのかという事が分かります。
このように、JREITでは個々の不動産価値だけでなくポートフォリオにおける貢献度も加味して取得を行なう事も例外的に生じますが、これらの事例がキャップレートの低下を市場に印象付けることに繋がります。
このような状況は、中小規模のオフィスビルを抱えて出口に苦慮していた私募ファンドにとっては追い風となります。
現在のJREIT市場は、個々の不動産の差を吟味出来ませんから、築15年前後の中規模オフィスビルを4%台のキャップレートでJREITに移しても、手厳しい反発はありません。
逆に、資産価値としては優位にある築浅のレジデンスよりも高い評価を与える傾向にありますから、 新規銘柄では中小規模オフィスビルを組み込む傾向が加速します。
不動産投資の面から見れば、出来るだけ避けたい方向ではありますが、現在の状況を見ると、JREITに進出してくる銘柄の保有資産の質は、そのまま投資家の質を映す鏡なのかも知れないと も思えます。