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2005. 9. 1.Up Dated.
J-REITレジデンスの効用について
  
JREITにレジデンス銘柄が増え始め、賃貸マンションの取得も活発化していますが、レジデンスセクターに対する市場評価はやや厳しくなっています。
その最たる理由は、レジデンスからはオフィスビルや商業施設程の配当金が捻出出来ない点だと思いますが、一方、投資とは異なる視点で見ると、レジデンスセクターには社会的な効用が期待出来ます。

 まず一つ目として、 JREITが取得保有する賃貸マンションは、従来の賃貸マンションに比べると質が高くなっていますので、賃貸マンション市場の質の向上に寄与します。
又、質の高い賃貸マンションが供給される事で、潜在需要を顕在化し市場を活性化する役割も果すかもしれません。
 二つ目は、一般的な賃貸マンションオーナーと比べれば、JREITは経営母体がしっかりしていますので、JREITにとってあまり期待する必要のない敷金の返還規定等を透明化する事で、賃貸条件の合理的改良が進む可能性があります。
従来の賃貸マンション等では、テナント退去時の敷金返還規定が曖昧で、トラブルの基になっていましたが、JREITがこの問題に踏み込んで敷金返還規定を合理的に策定し透明化すれば、遅れていた賃貸市場の整備が進みます。
 三つ目は、経済波及効果です。
住宅建設事業は裾野が広いと言われている自動車産業に比べても約10倍の部品点数がありますので、JREITが開発型事業を促進することで、経済波及効果が高まります。
 四つ目は、不動産に固定されている富の解放です。
戦後の日本の住宅は、個人が所有する形態が主流になり、住宅は分譲を前提にして造られています。
個人が住宅を購入する際には、住宅金融公庫融資等を利用して30年以上の長期ローンを利用しますから、遠い将来の収入までを注ぎこむことになり、将来の富を住宅が固定してしまいます。
一方、賃貸住宅を利用するようになれば、将来の富を固定することなく、人生設計を組むことが可能となります。
但し、人間にとって住居は必要ですから、収入、家族構成、年齢に応じて賃貸住宅が選べるようにならなくてはなりませんが、良質な賃貸マンションが増えて賃貸条件も合理的に改良されれば、必ずしも住宅をストックとして考えないライフスタイルも成立します。

 以上のように考えると、JREITの保有する賃貸マンションが増え、JREITが大きな視点で賃貸市場を考えて必要な施策を取るようになれば、住宅市場の構造改革も夢ではありません。
その為には、レジデンス銘柄が目先の配当金を説明するだけでなく、将来の可能性や方向性を示して投資家の理解を得るという努力もしなくてはなりませんが、JREITも数が増えましたので、やや大風呂敷であっても、将来の夢と可能性を語る銘柄が出てきても面白いのではないかと思います。