1. 投資元本割れリスク(証券元本価値の下落リスク)
投資元本リスクについては2つの側面があります。
(1) 市場株価の変動により、購入価格を下回るリスク
公募又は市場で買い付けた価格が、その後の市場価格の推移によって元本割れするリスクですが、過去の実績を見ると、新規上場の公募価格での購入で、一定期間元本割れした例があります。
上場後の増資による公募価格の元本割れに比べると、その下落幅も大きく、期間も長期化していますので、無原則に新規上場銘柄に飛びつくと怪我をします。
新規上場銘柄の市場評価は、投資法人を設立したオリジネーター(設立母体となった企業)の信用力によって判断される傾向がありますので、投資家が安心できるオリジネーターか否かというのも一つの判断根拠になると言えます。
次に、市場で買い付けた価格の元本割れリスクについては、短期的には予測が難しいですが、中長期的には予測可能です。
中長期的な株価の動向は、何よりも各銘柄の保有資産の質と運用体制によって左右されます。 株式市場等の動向や景気動向にも左右はされますが、元々、対象となっている不動産から生じる賃料によって配当原資が捻出されていますので、JREITは株式や債券に比べると、一般経済動向との相関が低く、不動産マーケットとの相関が高くなります。
従って、不動産マーケットの動向と、その市場での競争力を吟味し、極力、フェアバリューに近い価格で購入すれば、元本割れリスクも緩和できます。
本サイトでは、不動産分析の視点で各銘柄のフェアバリューについても随時言及しますので、そちらをご参考にして下さればと思います。
◇不動産価値の下落リスク
最近では、公示地価の下げ止まりと上昇によって、不動産価値の下落リスクは遠のいたように思えますが、一方、東京都心部の不動産に見られる価格高騰による反転下落リスクも考慮する必要が生じています。
現在の不動産価値の算定は、不動産から生じる収益によって資産価値を計る収益還元法評価により行われるのが一般的になりつつありますが、東京都心部の不動産の収益利回りが年3%前後まで下落(価格は高騰)しています。
かつての不動産バブルでは、東京都心部のオフィスビルの収益利回りは2%ぐらいまで下がりましたので、危険水域に近づいているとも言えなくはありません。
更に、一部の不動産取引では収益還元法を無視した将来の値上がり期待での取引価格も見られるようになっていますので、今後の不動産価値については要警戒です。
然しながら、JREITの保有不動産のポートフォリオNOI利回りは5%程度確保されていますので、JREITの保有する不動産価値の下落リスクの懸念は小さくなっています。
従って、JREITが不動産価格の高騰に追随して高値で不動産の追加取得をしなければ、安全圏に留まると言えますので、個別銘柄の動きでチェックしていれば、大きな心配はありません。
(2) 投資法人の業績不振による投資元本割れリスク
投資法人は、投資を受け入れるための器のような存在ですので、業績不振による投資法人価値の下落というのは、資産運用会社の運用の優劣による保有資産の劣化に他なりません。保有資産の競争力低下による賃料及び稼働率の低下と、建物・設備等の経年劣化が原因になりますが、実際に業績不振と分かるのは、かなり深刻な状態になった時です。
投資家がJREIT株価の市場推移だけを追っていれば、業績不振に気付いた時は、最早、手遅れですが、投資対象の保有資産と運用状況を定期的にチェックしていれば予測可能です。
本サイトのような投資対象のモニタリングデータの提供や評価分析情報を利用することで
このような投資元本リスクの判断も回避も可能となりますので、各銘柄の項目をご覧下さい。
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