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2007.11.26.
エルシーピー投資法人 (8980)

 FCレジデンシャル投資法人と同じように、プロスペクトによる投資口大量保有によって、同族認定の危機を迎えましたが、こちらはぎりぎりの所で回避された模様です。
LCP側が行った投資主実態調査には、プロスペクトも応じたようで、FCレジデンシャルへの対応とは異なり、LCPに対しては、カーティス氏は未だ友好的なのではないかと推測されます。
カーティス氏の対応の違いの理由は分かりませんが、LCPの資産運用会社は、比較的柔軟な姿勢を持っていることと、GEリアル・エステートと組む等の成長努力に対する行動を評価しているのかもしれません。
一方、株価は依然として低迷を続けていて、30万円台の常連銘柄になっています。
但し、前回レポートしたPRIに比べると、こちらの配当金は年間で25千円/口を上回る水準になっていますので、パフォーマンスによる評価ではなく、ポートフォリオの質とオリジネーターへの信頼感に因っているのではないかと考えられます。

  1. オリジネーターについて
    LCPのオリジネーターは、米国REITのThe LCP Groupをメインとして、国内の中堅デベロッパー9社と極東証券になっています。
    メインオリジネーターのThe LCP Group は、日本国内での事業活動は行っていませんので、オリジネーターとしての貢献度は期待出来ません。
    従って、物件供給は、国内の中堅デベロッパー9社に頼ることになりますが、寄合所帯的な構成では多くは望めません。
    このような問題点を解決するために、平成19年3月にGEリアル・エステート(株)と事業協力を行い、同社から物件供給を受けられる体制を構築しました。
    然しながら、この新たな体制を発表しても、市場は大きな反応を見せずに株価は冴えませんが、その理由は、GEリアル・エステートの持つ私募ファンドの出口として使われるという懸念が挙げられます。
    実際にこの事業協力によって、GEリアル・エステートより7物件(レジデンス5件、オフィスビル2件)を取得しましたが、これらは従前のLCPのポートフォリオに比べれば良の部類に入りますが、取得価格の利回りが低過ぎました。(但し、鑑定価格を超えてはいない)
    GEリアル・エステートは7物件の譲渡と同時に、LCP投資法人の投資口を第3者割当で取得し、発行済投資口数の35%強を保有する最大の投資主になりましたので、必ずしも、短期利益の追求だけでLCPに参画した訳ではないかもしれません。(元々、JREIT銘柄の中でLCPを選択した事自体リスクを取った事にもなります)

  1. ポートフォリオの質について
    LCPの上場時組成資産の質は見るべきものはなく、率直に言って、私募ファンドレベルでしかなく、JREITの保有資産の質に達していませんでした。
    その後の外部成長ではやや質が好転しましたが、ニッチ用途の有料老人ホームにも手を染め出した事で、ますますポートフォリオの不確定リスクを増やしてしまい、投資家から忌避されました。
    元々、LCPのような小規模銘柄が色々な用途を投資対象とする総合型を目指す事自体無理があるのと、ご都合主義的な外部成長を行うと見られがちなのです。
    次に、それでは資産運用会社のLCPリート・アドバイザーズは今の状況をどう見ているのかが、今後にとっての重要なポイントになりますが、比較的素直に受け止めている感があります。
    この位株価の低迷が続けば、虚勢を張っても仕方ありませんし、資産運用会社の人員もJREIT進出に際して外部からスカウトされた人間も多く、何とかしなければJREITに残れないと言う危機感もあるようです。
    これはLCPの資産運用会社だけではなく、その他の独立系銘柄(オリジネーターからの出向体制以外の銘柄)にも共通している感覚で、JREITのように成長が見込まれる業界に残ることが、自らの将来にとって重要な事だという認識があります。
    又、出向者と違い戻る先がある訳ではありませんので、簡単にはキブアップ出来ませんし、仮にこの狭い業界で能力ナシと判定されれば、他の銘柄に移ることも出来ません。
    そういう意味では、資産運用会社の人は崖淵(がけぷっち)に立っているとも言えます。
    然しながら、危機感があってもJREITのような不動産運用の仕組みでは簡単に蘇生する方法がありませんし、又、かなり大きな視点と広い分野に亙った知識で対策を考えなくてはならず、そこまでのレベルに達するのは大変です。
    LCPの資産運用会社も危機感はあっても有効な対策は未だ立てられていませんので、今の状況を突破出来るか否かは不明です。
    但し、ある程度の可能性を見出すかも知れませんので、ここ半年が勝負になりそうです。
    前回レポートしたPRIに比べれば、配当金の大幅上昇という難しい課題は抱えていませんので、見方によっては、未だ手がありそうです。

  2. エクイティ・ファイナンスについて
    LCPの平成19年8月期の決算を見ると、LTVは既に56.6%まで上昇しています。
    この水準では、物件取得余力もありませんし、デッドの調達も難しくなります。
    最近の増資に見られるように、無理な増資を敢行すれば、1口当りの投資口価格で、上位銘柄とは2倍以上の差が開いてしまい、株式のように自己消却でもしない限り、株価がまともなラインに戻れなくなります。
    このように考えると、エクイティ・ファイナンスは劣後出資とも言えるような第3者割当増資しかありません。
    然しながら、GEリアル・エステートは限度一杯の投資口シェアーとなっていて、これ以上の割当は同族認定となりますから、別の引受先を探さなくてはなりませんが、オリジネーターとなっている中堅デベロッパーに資金負担能力があるとは思えません。
    このように考えると、JREITのサバイバルの第2幕に入るしかありません。(第1幕はオリジネーターの補強)
    第2幕は、銘柄の価値転換又は価値上昇を期待した投資ファンド等の引き込みで事業再生手法だとも言えます。
    但し、一般事業会社の再生とは異なり、人材を送り込んだりするのではなく、ポートフォリオの質の転換を図らなくてはなりませんから、物件供給と資金の出し手と2者が必要となります。
    客観的に見ると、非常に興味の沸く応用問題なのですが、新興投資商品であるJREITを理解出来る主体は少なそうですので、実現性には疑問があります。
    資産運用会社に、これらの可能性を理論的に充分に説明するだけの能力があるか否かも問題ですが、私は、LCPの再生にはこの手法しかないのではないかと考えています。
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