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2007.11.15.
プロスペクト・レジデンシャル投資法人 (8969)


  1. プロスペクトの動向について
    株価低迷銘柄の代表格とも言える銘柄ですが、一方で、オリジネーターのプロスペクトによる他銘柄の投資口の大量保有によって物議をかもしています。
    プロスペクトの会長であるカーティス・フリーズ氏の考え方については、金融ビジネス(東洋経済新報社刊)の2007 AUTUMN号の中のインタビュー記事で紹介されていますので、これらの内容を踏まえて解説致します。
    プロスペクトは日本国内の株式、JREIT、不動産などへ約2,000億円を投資している投資ファンドですが、プロスペクトのJREITへの関わりは古く、平成13年からJREIT進出に向けて私募ファンドを立ち上げていました。
    当時は、マンションの一室を事務所にして、3人の設立メンバーとカーティス氏が活動していました。 カーティス氏は、日本での投資活動が中心で、日本語も話せますし、日本の習慣などにも通じている人物ですが、残念ながら漢字は苦手なようで、日本語の文章を正確に理解することは難しく、その為に誤解を生じることもあるようです。
    このカーティス氏率いるプロスペクトが、FCレジデンシャル投資法人の投資口を買い集めた結果、税法上の同族認定を受ける可能性が生じ、配当金が約40%減になるという事件に発展しました。
    カーティス氏は大株主として、FCレジデンシャル投資法人に対して、オリジネーターの変更(現在のオリジネーターは潟tァンド・クリエーションで非上場の私募不動産ファンドの運用会社)を求めているようで、FCレジデンシャル投資法人の成長には必要な施策であるという認識を持っています。
    このカーティス氏の考え方は常識的だとも言え、現在のJREIT市場でのFCレジデンシャル投資法人の評価を考えれば、このままでは存続が難しくなります。
    では、何故、同族認定のラインまで買い進んだのかは定かではありませんが、結果的に見て既存投資主にとって、マイナスとなる手法を採ったカーティス氏の行動には不審感を抱かれています。(やり過ぎではないかという声もあります)
    この辺の事情は外部からは計り知れませんが、私は、ファンド・クリエーションがカーティス氏の提案を無視した事による報復措置なのではないかと見ています。
    それではこれからどうなるのかが問題ですが、カーティス氏とファンド・クリエーションが同じテーブルに付いてFCレジデンシャル投資法人の今後について話し合うようになるまで、カーティス氏は攻勢を緩めないと思います。
    一方、ファンド・クリエーションも頑な姿勢を堅持しているようですが、冷静に考えれば、FCレジデンシャル投資法人を支えるには力不足でもありますし、金融商品取引法の本格施行によって、自分達の業務に手一杯になっているはずですから、面子に拘らないで柔軟な姿勢に転換する必要もありそうです。
    攻勢に出ているカーティス氏と門戸を閉ざしているファンド・クリエーションの間に立って苦慮しているのが、資産運用会社のファンドクリエーション不動産投信です。
    資産運用会社であるファンドクリエーション不動産投信は、FCレジデンシャル投資法人の大株主であるカーティス氏の意見も聞く必要がありますし、オリジネーターの意向も無視出来ませんから、板挟み状態ではないかと思います。
    今のところ解決の糸口は見えていないようですが、最も有力な方法として強力で新たなオリジネーターを探して来ることだと考えられます。 カーティス氏も前述のインタビュー記事の中で不動産大手10社に言及していますが、恐らく、JREITに進出していない不動産会社を念頭に置いているのかも知れません。 (注;一般的に不動産大手6社(三井・三菱・住友・東急・野村・東京建物)とは言われますが、10社になると何処が入るのかは分かりません。)

  1. プロスペクト・レジデンシャル投資法人の課題
    次に、本題のプロスペクト・レジデンシャル投資法人についてですが、カーティス氏の考え方はそのままPRIにも当てはまります。
    PRIは、現在約700億円の不動産を保有していますが、既にLTVは50%程度になっているのと、これ以上は資金調達が困難な環境にあります。
    先日(平成19年10月)、投資法人債50億円を2年償還で出しましたが、これは金融機関からの借入が困難になっている為ではないかと考えられます。
    従って、今後も投資法人債で繋いでくる可能性もありますが、根本的にはエクイティ・ファイナンス(増資)を成功させなければ先に進めません。
    エクイティ・ファイナンスの成功の条件は、
    @ 市場環境の好転
    A 信用強化
    B 証券会社及び投資家への説明体制の充実
    が挙げられます。
    @について年内は変化がなさそうなので、年明け以降まで我慢しなくてはならないでしょう。
    Aの信用強化とはオリジネーターの変更ないし新規参画を示します。 信用強化となりそうなオリジネーターを探せるか否かに因りますが、恐らく、国内不動産会社、外資系と幅広く物色しているのではないかと考えられます。
    Bについては資産運用会社の体制が変更された事で対応を強化するのであろうと思われます。
    資産運用会社のプロスペクト・レジデンシャル・アドバイザーズ鰍フ社長が、平成18年6月に交代していますが、新しく社長となった真木剛氏は、元日本プライムリアルティ投資法人の資産運用会社である鞄結档潟Aルティ・インベストメント・マネジメントの取締役財務部長を務めた人物です。
    恐らく、その財務手腕を請われての社長就任だと思われますが、就任後から着々と人材の補強を行っているようです。
    このようにカーティス氏も他銘柄に口を出すだけでなく、自分の所の銘柄にも対応策を施しているようですが、そもそもは上場時のカーティス氏の判断ミスがPRIの今日を招いたとも言えますので、ある意味では当然です。
    勿論、この他の対策として、場合によっては第3者割当による増資を引き受ける事もあるかもしれませんが、それもPRIのオリジネーターの義務だとも言えなくはありません。

    それでは、このような対策によってPRIが再生するのかと言うと、必ずしもそう甘くはありません。
    PRIの抱えている課題は、「配当金」と「ポートフォリオの質」に収斂します。
    1期の配当金が1万円以下というのは低過ぎますから、これを上げる努力が必要ですが、そう簡単には上昇しません。
    先ず、不動産売却益も出しながら取り敢えず9,000円台を維持し、更に、1万円台を目指すという手順になりそうですが、売り食いはそう長くは続きませんし、売りたい物件は売却損が出そうだという難題があります。
    理想的には、資産入替えによってポートフォリオの質を改善し、更には、不動産売却益をも捻出する事ですが、その余地は決して大きくはありません。
    元々、PRIは資産取得に際して、建物価格を圧縮(主として地方物件)して配当金原資を少しでも増やそうとした為に、上場から未だ2年しか経ていない状況では簿価の圧縮がそれ程進んでいません。
    従って、これらを売っても売却益が殆ど出ないという状態にもなり、仕方なく、ポートフォリオの中でも比較的良の部類の物件を売らざるを得ないという事になります。
    このように不動産の運用では、妙手というものはなく、又、ミスは必ず具現化するというのが原則です。
    だからこそ、長期の視点で物事を捉え、保守的な運用を心がける必要があるのです。
    その原則を守らなければ、自らが尻拭いをしなくてはならないと言うのがJREITの資産運用の現実なのです。
    PRIは、この原理原則を充分に理解し、オリジネーター共々最善の努力をこれから長期亙って続けられるか否かによって命運が左右されます。 そして、投資家がその能力があると判断すればもうしばらく猶予を与えてくれるでしょうが、逆に、見限られるようでは万策が尽きると思います。  
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